2019年 6月 16日 08:17
頭角をあらわす
昨夏、金足農高で秋田勢103年ぶりの甲子園準優勝に導いたスター投手のプロ初先発とあって、3万3千人が詰めかけた12日の札幌ドーム。日本ハムのドラフト1位新人の吉田輝星(18)は、広島相手に5回1失点で勝った。高卒新人の初登板先発勝利は2015年の安楽智大(楽天)以来で、ドラフト制の導入後では17人目。晴れ舞台で見せたのは投手としての才能だった。
吉田は「雑草魂」「闘志」といった言葉を好む熱い男。昨夏の甲子園の決勝でかぶった帽子のつばには「マウンドは俺の縄張り 死ぬ気の全力投球」と書くほど。ただ、初めてのプロのマウンドでは冷静だった。
一回、先頭の長野に安打を許した直後から見られた。セットポジションに入った後の静止が長い。打者はじれ、走者もスタートを切りづらくなる。自分のペースを作ろうと落ち着いていた。1死満塁のピンチを背負ったが、そこから度胸満点の熱い男が顔をのぞかせる。「ストレートで押して打たれたらしょうがない」。西川を直球だけで3球三振。磯村を三ゴロに抑え、無失点で切り抜けた。
4番鈴木の分析は、吉田の直球が独特だったことを物語る。 「あまり見たことがない直球。きれいに来るボールがあったり、まっスラ気味に来たりするのもあって難しい」
「まっスラ」はまっすぐ(直球)を投げたが、勝手にスライダーのように変化するボールのことで、吉田自身も意図して投げていない。
昨年、各球団のスカウトへの取材では直球だけでなく、フィールディングの良さなど総合的な評価は高かった。ただ、身長175センチとプロ野球選手としては小柄。「伸びしろがあるのかどうか」「まとまっている」という声もあった。外れ1位で、日本ハムの単独指名になった理由の一つだと言える。
育成に定評のある日本ハムの基本方針は「スカウティングと育成で勝つ」。最も優れたアマチュア選手を獲得して経験を積ませ、一流に育ててきた。交流戦でデビューする構想は青写真として描かれていたと言っていい。1月の新人合同自主トレからの半年、球団の吉田に対する身体的な評価は、ほかの新人と比べても「強い」。高校時代、雪の中を走り込んできた下地がある。走る能力が高く、練習量もこなせる丈夫な体で回復力も高いと判断していた。
吉田は2軍でほとんど直球しか投げていない。球団は変化球でかわす投球を許さなかった。本人も「変化球は操れていない」。9試合で26回を投げ、0勝3敗、防御率4.15。勝利投手の権利を得られる5回を投げていない。1軍デビューまで2軍で一定の投球回数をこなすプログラムを当てはめる選手ではなかったようだ。
昨夏、金足農高で秋田勢103年ぶりの甲子園準優勝に導いたスター投手のプロ初先発とあって、3万3千人が詰めかけた12日の札幌ドーム。日本ハムのドラフト1位新人の吉田輝星(18)は、広島相手に5回1失点で勝った。高卒新人の初登板先発勝利は2015年の安楽智大(楽天)以来で、ドラフト制の導入後では17人目。晴れ舞台で見せたのは投手としての才能だった。
吉田は「雑草魂」「闘志」といった言葉を好む熱い男。昨夏の甲子園の決勝でかぶった帽子のつばには「マウンドは俺の縄張り 死ぬ気の全力投球」と書くほど。ただ、初めてのプロのマウンドでは冷静だった。
一回、先頭の長野に安打を許した直後から見られた。セットポジションに入った後の静止が長い。打者はじれ、走者もスタートを切りづらくなる。自分のペースを作ろうと落ち着いていた。1死満塁のピンチを背負ったが、そこから度胸満点の熱い男が顔をのぞかせる。「ストレートで押して打たれたらしょうがない」。西川を直球だけで3球三振。磯村を三ゴロに抑え、無失点で切り抜けた。
4番鈴木の分析は、吉田の直球が独特だったことを物語る。 「あまり見たことがない直球。きれいに来るボールがあったり、まっスラ気味に来たりするのもあって難しい」
「まっスラ」はまっすぐ(直球)を投げたが、勝手にスライダーのように変化するボールのことで、吉田自身も意図して投げていない。
昨年、各球団のスカウトへの取材では直球だけでなく、フィールディングの良さなど総合的な評価は高かった。ただ、身長175センチとプロ野球選手としては小柄。「伸びしろがあるのかどうか」「まとまっている」という声もあった。外れ1位で、日本ハムの単独指名になった理由の一つだと言える。
育成に定評のある日本ハムの基本方針は「スカウティングと育成で勝つ」。最も優れたアマチュア選手を獲得して経験を積ませ、一流に育ててきた。交流戦でデビューする構想は青写真として描かれていたと言っていい。1月の新人合同自主トレからの半年、球団の吉田に対する身体的な評価は、ほかの新人と比べても「強い」。高校時代、雪の中を走り込んできた下地がある。走る能力が高く、練習量もこなせる丈夫な体で回復力も高いと判断していた。
吉田は2軍でほとんど直球しか投げていない。球団は変化球でかわす投球を許さなかった。本人も「変化球は操れていない」。9試合で26回を投げ、0勝3敗、防御率4.15。勝利投手の権利を得られる5回を投げていない。1軍デビューまで2軍で一定の投球回数をこなすプログラムを当てはめる選手ではなかったようだ。